■書名:心を動かす介護の魔法 現場で生まれた25の感動介護ストーリー
■編者:翔裕園・翔裕館 介護で日本を元気にするプロジェクト
■出版社:幻冬舎
■発行年月:2017年11月
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介護現場で実際にあった心温まるエピソード―現役介護士が綴る体験談25話
全国に介護施設を展開する翔裕園・翔裕館で行われた、現役介護スタッフの作文コンクール。本書は、その作文コンクールで集められた介護現場のエピソードをまとめたものだ。
実際に現場で働く介護職の活躍からは、心温まる介護現場が想像できる。
本書で紹介されているエピソードは全部で25話。内容別に5つの章にまとめられているので、関心のあるところから読むこともできる。
Chapter1は、新人職員のエピソードを集めた「はじまりのストーリー」。
介護技術に不慣れな新人介護職でも、お世話をする高齢者のために日々努力を続けていれば、報われる瞬間があることがわかる。
ここで最初に紹介されているのは、入職1年目の新人介護士 川崎さんと、元医師でアルツハイマー型認知症の入居者 多田さんのエピソード。
入居者の多田さんは当初、介護されることを拒否し、怒鳴り声と杖でいつも介護スタッフを追い払っていたという。しかし、川崎さんの丁寧なケアを受けていくうちに、少しずつ心を開き、ついには他の入居者や施設の介護スタッフとも関わり合えるようになる。
この奇跡のような体験から、新人介護士の川崎さんが学んだことは大きかったという。
<当時まだ新人だった私を多田さんが誰より必要としてくれたこと、私のケアを通して多田さんがどんどん変わっていったことは、私にこのお仕事の「喜び」と「やりがい」、そして同時に「責任の重さ」を教えてくれました。>
新人のうちは特に、利用者とのコミュニケーションがうまく取れずに悩んでしまうことも多い。
しかし、技術面ではベテラン介護士に劣っていても、新人ならではの謙虚さやひたむきさは強みにもなるはず。川崎さんの場合には、それが大きな成果につながったのだ。
新人介護職の一生懸命な姿が書かれた体験談に、介護の仕事を始めたばかりの人やこれから介護職を目指す人は、特に励まされることだろう。
Chapter5「旅立ちのストーリー」では、人生最期のときを迎える入居者と向き合うことになった介護士の姿に心を動かされる。
中でも「23 最期のときに立ち会う覚悟」では、介護士の結城さんが初めての看取りを前に悩む様子がよく伝わってくる。
<頭の中で不安がぐるぐると渦巻き、眠れない夜が続きました。介護の道に進むと決めたとき、最期の瞬間に立ち会う状況が何度も訪れるであろうことは覚悟していたつもりでした。しかしいざその瞬間に立ち会うことを想像すると、恐怖で体がわなわなと震え出してしまうのでした。>
その後、結城さんは恐怖から逃げずに看取りと向き合っていくことを決意し、看取りのセミナーに参加。最期に立ち会う心構えを確認することで、不安や恐怖を解消していく。同じように悩んでいる人には、参考になるのではないだろうか。
現場の介護職が自分の言葉で語る体験談はとても読みやすく、気軽に手に取って欲しい一冊だ。
これから介護職を目指す人にも、すでに介護職として働いている人にも、心に響くエピソードがあるはず。読み進めるにつれ、介護の仕事に向き合う元気が出てくることだろう。
編者プロフィール
翔裕園・翔裕館 介護で日本を元気にするプロジェクト
翔裕園(社会福祉法人元気村グループ)・翔裕館(株式会社サンガホールディングスグループ)・特定非営利活動法人共生フォーラムより、介護に対するイメージを変える社会運動としてプロジェクトチームを発足。