■書名:【ポケット介護】見てわかるリハビリ 「活動」と「参加」につなげるコツ
■著者:繁岡 秀俊
■出版社:技術評論社
■発行年月:2017年3月
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高齢者の生きる楽しみのために、「今できること」を増やすリハビリを!
リハビリテーション(rehabilitation)とは、re「再び」+habilitation「適した」(ラテン語の「habilis」に由来)であり、直訳すれば「再び適した状態になる」という意味だそうだ。
病気やケガによって機能が低下した部位が、運動やマッサージによって再び元通りになるというのが、一般的なリハビリのイメージではないだろうか。
しかし、介護職であれば、リハビリをしても必ずしも身体の機能は元通りになるわけでないということは誰もが知っているだろう。
では、リハビリでなかなか身体の機能が戻らない人は、元通りになるまで、一生懸命リハビリをしなくてはならないのだろうか。著者の繁岡さんは本書の冒頭でこう述べている。
<たとえ劇的な機能向上が期待できなくても、その方には生きる楽しみ、人生の充実感を味わう権利があるはずです。今は外出できなくても「機能向上」と「活動と参加」の相乗効果で、笑顔や会話が増え、目標や生き甲斐を感じることができる、それこそが生活期のリハビリです。>
「生活期」とは、病院での急性期・回復期を経て在宅で生活をする時期のことをいう。
介護の現場はまさしくこの「生活期」を支えることになる。
繁岡さんがめざす生活期のリハビリとは、漫然と機能訓練を繰り返すのではなく、現状の身体機能でできることを見つけて、毎日の生活の中での活動につなげていこうというものだ。
「できないこと」をマイナスの視点で見るのではなく、「今できること」というプラスの視点でとらえることで、本人も介護職も気持ちが楽になり前向きになれる。
本書は、次の4章で構成されている。
第1章 身体の基礎知識
第2章 リハビリの動作
第3章 できる日常生活活動を増やそう
第4章 社会参加を目指そう
第2章では「寝返り」「起き上がり」「坐位」「立ち上がり」「立位保持」「歩行」の基本動作に「移乗」動作を加えて、それぞれの動作で必要となるリハビリについて、イラストを交えてわかりやすく解説。
第3章、第4章には、繁岡さんが最も伝えたい「日常生活活動」と「社会参加」について書かれている。
まずは、食事や更衣、入浴などの日常動作の中でできることから始めて、自分でできる日常生活活動を増やすためのリハビリ方法を解説。そのあとに、外とのつながりを持つ「社会参加」をめざすためのリハビリのノウハウが紹介されている。
コンパクトな大きさに、基礎知識からリハビリの具体的なやり方までまとまっているのが、本書の特徴だ。【ポケット介護】の名前の通り、ポケットに入れて携帯できるサイズなので、介護現場でいつでも参考にすることができる。
巻末には一般的な五十音順の索引に加え、リハビリのレベル別の索引もついているのが嬉しい。
また「〇〇がある“つもり”になって、頭の中で想像しながらリハビリをしてみよう」という繁岡さん考案の「エアリハ」の方法も随所で紹介されている。
何もできないと諦め、部屋にこもっていた人が、できることから少しずつリハビリを始めて、その人らしい生活を営むことができ、人生の充実感を味わう。それこそが人としての復権、すなわちリハビリテーションなのだということを教えてくれる一冊だ。
著者プロフィール
繁岡 秀俊(しげおか・ひでとし)さん
別名 日向亭 葵。理学療法士、おしゃべりテーションの会代表。全国の高齢者に介護予防を笑いで伝える専門家。年間100講演・1万人以上の高齢者をサポートし、「笑い」と「想像」の力で、体操を毎日の習慣にするエアリハを考案。わずか90分で体の痛みを「笑顔」に変える独自の講演スタイルで日本全国を飛び回り、執筆活動や個別健康指導も行っている。