■書名:これならわかるシーティング
■著者:光野 有次、串田 英之
■発行元:ヒポ・サイエンス出版
■発行年月:2019年3月
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「座り方」と「姿勢」で生活が変わる!シーティングの技術をプロが解説
介護をしている人なら、寝たきりにしておくことはいけないことはご存じだろう。
寝たままの状態が続くと、筋肉が萎縮したり、褥瘡(じょくそう)を作ってしまったりするうえに、バランス機能や血圧、心肺の機能が低下する、いわゆる「廃用症候群」が起こってしまうことも。
それが原因で食事や排泄、入浴の自立も難しくなり、生活のレベルが下がることにもつながる。
そのようなことにならないために、日中は自力で体を起こして動かすようにするのが大切だ。
歩行が難しい人は、椅子に座ってもらうことになるのだが、その座り方に問題があると、椅子から滑り落ちそうになっていたり、横にずれてしまったり、前のめりになってしまったりと危なっかしい状態になってしまう。
<人は1日の生活リズムの中で、一定時間、起きている時間を確保しなければなりません。しかし、心身機能が低下すると、椅子や車椅子に坐ることが難しくなります。
シーティングは、「快適な坐り」を提供することで、少しでも長い時間、体を起こしてもらう方法です。1人でも多くの介護者に、シーティングの視点を養い、問題点を見抜き、解決方法を考え、それを実践できるようになっていただきたいのです。>
どうしたら安全に座ってもらうことができるのか、コツを知りたいと思う人にとってピッタリの一冊だ。
本書の著者、光野さんはシーティングエンジニア、串田さんは作業療法士だ。
光野さんは用具、串田さんは姿勢という2つの視点からシーティングを捉えていて、より快適で無理のない座り方を伝授してくれる。
ちなみに、漢字の「坐」は人の座るという「行為」を表現し、「座」は人が座る「場」を意味するという、漢字の意味も解説されている。
本書の内容は以下のとおりとなっている。
第1章 なぜ長く坐ると疲れるのか?
第2章 坐位と椅子の基本知識
第3章 シーティングの実際
第4章 シーティングで改善する疾患
第5章 シーティングにおける「現場」の問題とその解決法
第1章では、二足歩行、人体構造から解説し、ヒトは意外にも歩くことに長けた生物で座ることは苦手ということが説明されている。
第2章では、「座り」を分類化し、椅子に座るための目的、その目的に応じた角度や形状について述べられている。
第3章は、いよいよシーティングの実践だ。
事例を交えながら、困難事例の原因と対応方法を、クッションやベルトの使用、座面の角度を適切に変えるなど、「姿勢」と「用具」の両視点から具体的に解説。共著の強みが発揮される章となっている。
第4章では、適切なシーティングによって、誤嚥(ごえん)や褥瘡(じょくそう)が改善する事例を紹介。
第5章では、用具の選び方や活用方法、シーティングの実行にあたっての留意点をまとめている。
巻末には用語解説もついているので、わからない用語はここで理解できる。
理解を助けるための図表や写真が多く掲載されているのだが、しっぽのないカンガルーのような動物のヘタウマなイラストが、表紙を含め随所にあり、それが息抜きとなっているのも本書の魅力かもしれない。
座位姿勢を整えると、まず高齢者・介護者の笑顔が見られ、心身状態の変化とともに生活の質の改善がすぐに確認できると著者のお2人は述べている。
利用者のよりよい日々の生活を提供するためにも、ぜひ一読されることをお勧めする。
著者プロフィール(引用)
光野 有次(みつの・ゆうじ)さん
1949年、佐世保市生まれ。金沢美術工芸大学卒業後、日立製作所(デザイン研究所)に勤務。1974年に障害のある人の生活用具づくりのために「でく工房」設立(現会長)。重症心身障害児施設での勤務を経て、1988年「無限工房」設立、2003年「パンテーラ・ジャパン」設立。
串田 英之(くしだ・ひでゆき)さん
1974年、埼玉県生まれ、静岡県育ち。1996年、北海道東海大学生物工学科卒業後、昭和大学医療短期大学作業療法学科卒業。一宮温泉病院(山梨県)リハビリ科に入職し、主に重度脳血管疾患患者のリハビリを担当。2007年、湖山リハビリテーション病院に入職し、医療療養病棟に配属。2008年から光野有次氏の協力をあおぎ、臨床でのシーティング技術の向上・普及のため、「富士・富士宮シーティング勉強会」を湖山リハビリ病院で隔月開催。