■書名:マンガでわかる介護職のためのアンガーマネジメント
■著者:安藤 俊介
■漫画:吉田 美紀子
■出版社:誠文堂新光社
■発行年月:2019年9月
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介護現場での“イライラ”、どう解決する?『怒り』の中身を知れば働きやすい毎日に!
イライラ、ムカムカ、プンプン、モヤモヤ、カンカン、ブスッ、ブチッ…。こんな気持ちになってしまい、なんとかしたいと思っている介護職は少なくないだろう。
怒りの感情に振り回されると、気分はよくないし、仕事ははかどらないし、人間関係も悪くなる。
『そんなことはわかっているけど、どうしたらいいのかわからない!』という人におすすめしたいのが本書だ。
<介護現場は人の感情に直接向き合うことになる感情労働と呼ばれる職場です。人の感情の中でもとりわけ、怒りという感情に向き合うことが多くなります。
アンガーマネジメントは1970年代にアメリカで生まれた怒りの感情と上手に向き合うための心理トレーニングです。怒らなくなることが目的ではなく、怒る必要があることは上手に怒り、怒る必要がないことは怒らなくてすむようになる、その線引きができるようになることを目指します。>
最初の「はじめに」で書かれているこの文章でわかるように、本書では
怒らなくなることを目的としているわけではないことに注目したい。怒りとは自然な感情で善悪はなく、怒る必要があるときは怒ってよいのだ。
怒る必要がないことには怒らなくていいように、線引きができるようになり、『怒りを管理すること』こそアンガーマネジメントの目指すところなのだ。
私たちは、怒りという感情について誤解していることもあり、本書はまず怒りについて知ることから順序だてて説明が始まっている。
本書の構成は次のようになっている。
・介護現場でよくある怒りの具体的な30のケースについて、その場面をマンガで再現。
・その事例を解決するために必要なアンガーマネジメントの知識を解説したあと、それを実践する方法とコツを紹介。
・本文に載せきれなかった怒りの知識をまとめた「怒りの雑学」や、実際にアンガーマネジメントを学んで実践した人による「私のアンガーマネジメント体験」も掲載。
本書で紹介されている具体的なケースは、
「利用者からの暴力に、ついカッとなってしいまい……」
「頻繁なコールにイライラ」
「あれこれ口うるさい利用者家族にイライラ」
「認知症利用者からのセクハラ」
「やたらと口出ししてくる先輩にムカッ」など。
タイトルを見るだけでも、誰もが経験したことのある事例ばかりだ。
また「イケメンからしかご飯を食べない利用者にムカッ」という、ちょっと笑えるケースもある。
それらを見事にマンガで再現してくれているのが、吉田美紀子さんだ。
実際に介護従事者として働いているマンガ家の吉田さん。紹介されている30の事例は彼女が実際に経験したことや見聞きしたことがもとになっている。
マンガの登場人物は、吉田さん自身と思われる介護歴10年・40代の白鳥さんをはじめとする総合介護サービス事業所のスタッフや利用者とその家族。
彼らが繰り広げる介護現場の様子に、思わず「そうそう!」「似たような経験がある!」と声をあげてしまいそうになることだろう。
マンガに続く知識編では、「怒りは身を守るための『防衛感情』」「怒りの奥には、別のマイナス感情が隠れている」「笑顔を作ると、怒りが静まる」「怒りの衝動に対処する」「会話の主語を『私』に変えよう」など、怒りについて学べるようになっている。
知識編を読むと、これまで怒りというものについて、これほど深く考えたことはなかったことに気づかされる。
怒りについてよく理解した上で、
「相手が何に脅威を感じたか考えよう」
「第一次感情を解消しよう」
「危機回避を優先しよう」
「口調は穏やかに ボディランゲージは堂々と」といった実践を行うと効果はありそうだ。
日々の業務で忙しい中で、怒ることについて学び、それをコントロールする術を身に着けることはたやすいことではないかもしれない。
しかし少しずつでも意識して対処することができれば、あなたの環境は働きやすくなるのではないだろうか。
著者プロフィール(引用)
安藤 俊介(あんどう・しゅんすけ)さん
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事。アンガーマネジメントコンサルタント。企業、教育現場にある怒りの問題を解決する専門家。アンガーマネジメントの理論、技術をアメリカから導入し、日本での第一人者となる。教育現場から企業まで幅広く講演、企業研修、セミナー、コーチングなどを行っている。日本人として初めてのナショナルアンガーマネジメント協会、アンダーソン&アンダーソン、MFTNY公認のアンガーマネジメントファシリテーターとなる。ナショナルアンガーマネジメント協会では15名しか選ばれていない最高ランクのトレーニングプロフェッショナルに、アジア人としてただ1人選ばれている。
漫画家プロフィール(引用)
吉田 美紀子(よしだ・みきこ)さん
20代からおもに4コマ誌で活躍。セカンドキャリアで介護の仕事を始める。コミックエッセイに『40代女性マンガ家が訪問介護ヘルパーになったら」『中年マンガ家ですが介護ヘルパー続けてます』(ともに双葉社)がある。