■書名:認知症専門家医が教える!脳の老化を止めたければ歯を守りなさい!
■著者:長谷川 嘉哉
■出版社:かんき出版
■発行年月:2018月11月
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歯みがきで脳の老化を防ぐ!脳と全身の健康を守る口腔ケアとは?
「8020(ハチマルニイマル)運動」という言葉を知っていますか?
「8020運動」とは、「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という運動のこと。30年も前の1989年に厚生省(当時)と日本歯科医師会によって始められた運動だ。
生涯、自分の歯で食べる楽しみを味わえるようにと、幼稚園・保育園や学校、自治体主催の健康講座などで歯みがきの大切さを伝える啓発活動を30年に渡って行った結果、食後に歯を磨くという習慣はかなり浸透したといえる。
介護の現場でも、最期まで自分の口から食べられることを考えた食事介護も行われており、口や歯は今や最も注目されている器官といえる。
歯をケアすることが認知症予防になると聞くと疑問に思うかもしれないが、本書を読めば口や歯といった器官の重要性がわかり納得できるだろう。
<「脳」は、「生きる」ためにもっとも必要な「食べる」機能を最重要視して、口を含む「歯」の領域を、特別に大きく設計しました。
だから、「歯」を使って噛むだけで、脳の広い範囲が活性化するのです!
けれど、歳をとり、歯が抜けて噛めなくなると、脳への刺激が減っていきます。その結果、脳が老化していきます。
しかし、しっかりと歯をケアし、噛み続けるための歯を温存すれば、いつまでも脳を刺激し続け、脳の血流を増やし、脳を活性化することができます。
噛み続けることができれば、いくつになっても脳は生き生きとよみがえるのです。>
著者の長谷川さんは通常の認知症診療に加えて、歯のケアも行う認知症専門医だ。
自身の祖父が認知症だったことから認知症専門外来・在宅医療のクリニックを開業。
多くの認知症患者を診ていく中で、認知症と口腔環境との関連性にいち早く気づき、高齢者の口腔内衛生の徹底を提唱している。
本書の構成は以下のとおり。
第1章 「ボケない脳」をつくるのは、「歯」だった!
第2章 これだけある!歯と病気や症状の関係
第3章 認知症専門医が教える、脳の老化を防ぐ歯のケア方法
第4章 歯医者さんを味方につける
第5章 心地よい歯みがきで、脳をみがき続けよう!
まず第1章で、口を刺激すると脳が活性化する仕組みや、歯の残存数と認知症との関係を解説。
続く第2章では、口腔内細菌がもたらす病気を紹介。
口が汚れていると口臭がひどくなるだけではなく、歯周病、アルツハイマー病、糖尿病、脳卒中、心筋梗塞、誤嚥性肺炎を引き起こすという。
第3章では、前章で紹介した病気を防ぐための歯のケア方法を詳しく解説。
歯ブラシを使った定番の歯みがきのほかに、「舌まわし」で唾液を出してドライマウスを防ぐ方法や、ガムをかんで脳血流を増やすことも紹介している。
中でも、油で口をゆすぐという「オイルプリング」は、口がギトギトしそうだが、意外にもすっきりして気持ちよくやみつきになるというから驚きだ。
さらに、こうした日ごろのケアがきちんとできているかを歯の専門家である歯科医に診てもらう必要性を第4章で説明。
長谷川さんは
「髪を切るがごとく、歯科を受診しよう」と推奨している。
自らのケアと歯科医によるケアで歯みがきが心地よいものとなれば、やる気が呼び起こされ脳は活性化すると最終章でまとめられている。
「8020」では足りない、
28本すべての歯を残す「8028」を目指そうという呼びかけに長谷川さんの熱い思いを読み取ることができる。
「歯」を守る介護を考えてみるのに最適な1冊だ。
自分が接している利用者さんの「歯」は何本あるか、一度確認してみてはどうだろうか?
著者プロフィール(引用)
長谷川 嘉哉(はせがわ・よしや)さん
医学博士、日本神経学会専門医、日本内科学会専門医、日本老年医学会専門医。毎月1000人の認知症患者を診察する、日本有数の脳神経内科、認知症の専門医。これまでに、20万人以上の認知症患者を診てきて、いち早く認知症と歯と口腔環境の関連性に気づく。現在、訪問診療の際には、積極的に歯科医・歯科衛生士による口腔ケアを導入している。さらに自らのクリニックにも歯科衛生士を常勤させるなどし、認知症の改善、予防を行い、成果を出している。「医科歯科連携」の第一人者として、各界から注目を集めている医師である。