介護職からステップアップするために資格を取るなら、介護福祉士を取得し、ケアマネジャーを目指すのが一般的です。しかしケアマネジャーより看護師の方がいい、という意見もありますね。
現在は、看護師と同じ国家資格で、内容も一部似た介護福祉士を持っていても、新たに看護師の資格を取ろうとしたら、未経験者と同じ扱いです。准看護師で2年、正看護師では3~4年かかります。
これではなかなか、新たな資格を取ろうという気持ちになれませんよね。しかし、この期間が短縮されるとしたら? ステップアップできる資格の取得を考えてみようと思えるかもしれません。
医療・福祉の資格取得に「共通課程」導入検討
新たな資格取得による進路変更を後押ししようと、厚生労働省が検討を始めたのは、医療や福祉の資格に「共通課程」を設けることです(*)。対象として検討されている資格は、看護師、准看護師、介護福祉士のほか、理学療法士などのリハビリ職の資格、保育士など。これらの資格のベースとなる知識を「共通課程」とします。
そして、たとえば介護福祉士有資格者が看護師資格を取るときには、本来、3年かかる資格取得を2年で取得できるなど、資格取得期間を短縮しようというのです。すでに一つの資格を持っている人は、この共通課程を修了していると見なすことも検討されています。
資格取得における共通課程の設定は、オランダの看護・介護資格モジュールが参考になります。モジュールとは、「部分資格」のこと。日本でいえば、「介護の基本」「障害の理解」などの科目が、一つのモジュールになっているイメージでしょうか。
オランダでは、様々な資格がレベル1からレベル5に分類されています。職業として成り立つ資格はレベル2以上です。たとえば、ヘルパーの資格はレベル2に分類され、ヘルパー資格を取るには6つのモジュールの認定を受ける必要があります。
2021年の共通課程導入を目指して検討中
ヘルパーの上位資格に当たるケアワーカーは、レベル3。こちらは、13の必修モジュールと4つの選択必修モジュールがあります。ヘルパーとケアワーカーには3つの共通モジュールがあり、ヘルパー有資格者がケアワーカー取得の際は、その3つのモジュールは認定済みと見なされ、必修モジュールは残りの10の認定を受ければよいという仕組みです。
モジュールは積み上げ式になっていて、一つずつ認定を受けていくことも可能です。そのため、働きながら少しずつ認定を受けることもできます。そして、すべてのモジュールが認定された時点で、その資格が取得できたことになるのです。こうした仕組みなら、自分のペースでステップアップできそうですね。また、途中で興味の方向が変わり、進路変更したくなったときもスムーズに変えられそうです。
日本の制度は、そこまではまだ想定していないようです。しかし、共通課程が検討されるようになっただけでも大きな変化です。導入は、2021年度を目指しているとのこと。まだ先の話になりますが、期待して見守りたいですね。
<文:宮下公美子 (社会福祉士・介護福祉ライター)>
*国家資格取得 医療・福祉に共通課程 進路変更後押し 厚労省検討 (毎日新聞2016年5月30日)