2019年、ケアマネの給与も改善する?処遇改善の柔軟な運用の検討へ
2009年から始まった、政府による介護職員の処遇改善施策。当初は、「介護職員処遇改善交付金」として介護サービス事業所に交付されていました。
その後、「介護職員処遇改善交付金」に代わって「介護職員処遇改善加算」がスタートし、介護報酬に組み込まれたのは2012年4月。以来、加算の形で継続しています。
▼介護職員処遇改善加算について
出典:厚生労働省
ただし、介護職員処遇改善加算の対象となるのは、訪問介護員(ホームヘルパー)、サービス提供責任者、介護施設や小規模多機能型居宅介護等の介護職員のみ。
ケアマネジャーなどは対象外であり、不満の声が上がっていました。
しかし、2019年10月からは、処遇改善のための加算を介護職以外の職種にも使えるようにする方向で検討が進められており、ケアマネジャーなどの給与水準も引き上げられそうです(*)。
介護職には実感が得られていない「介護職員処遇改善加算」
介護職員処遇改善加算については、厚生労働省の調査では、91.2%の事業所が取得していると発表している一方で、介護労働安定センターによる調査では、算定した事業所は74.6%(算定対象外の事業所10.6%を除いても、筆者の算出では算定対象の事業所の83.4%)とギャップがあります。
また、実際の介護職員の処遇改善についても、政府発表と民間の調査にはギャップがあります。
政府によると、2016年と2017年の比較で介護職員の平均給与(月給・常勤者)は1万3660円上がったとのこと。これを含め、2009年度からこれまでの施策によって、介護職員の給与水準は月額平均5万7000円の改善があったとしています。
一方で、処遇改善加算が給与に反映されている実感がないと感じている介護職員が4割に上るという民間調査の結果もあります。
2017年度の介護労働実態調査(介護労働安定センター実施)によると、介護職員処遇改善加算を算定した事業所は、「一時金の支給」や「諸手当の導入・引き上げ」で対応するケースが6割前後。「基本給を引き上げる」対応を取った事業所は4割前後と、必ずしも多くありませんでした。
処遇改善交付金が実施されていた頃から、「この処遇改善施策はいつまで続くのか?」と不安を訴える介護事業所の声がよく聞かれました。
介護職員の基本給を引き上げたあと、処遇改善施策が打ち切られたら、対応できない事業所もあります。そのため、なかなか基本給を引き上げにくいという実態があると思われます。
介護職員からすれば、基本給がアップすれば、処遇が良くなったと思えるかもしれません。
しかし、一時金や諸手当の支給では、まさに一時的な処置という印象。この先もずっと続く処遇の改善があったという実感は、なかなか得にくいのではないかと思います。
1000億円が介護人材の処遇改善に使われることに
給与水準だけの問題ではありませんが、前出の介護労働実態調査によれば、介護職員は相変わらず離職率が16.2%と高く、求人難も続いています。
2025年には34万人の介護職員が不足すると推計されており、人材確保のため、政府は介護職員の処遇改善にさらなる施策を打つことにしています。
2019年10月に、消費税増税と同じタイミングで、介護サービス事業所で勤続10年を超える介護福祉士に月額平均8万円相当の処遇改善を、これまでの処遇改善加算とは別に実施する予定なのです。これは、2017年12月に「新しい経済政策パッケージ」の「人づくり革命」の一環として閣議決定されています。
冒頭で伝えた、ケアマネジャーなどの処遇改善は、この新たな処遇改善加算で行われる見込みです。この加算創設に向けて、すでに約1000億円の予算が確保されているとのこと。
今度こそ、政府発表でも民間調査でも「介護職員の処遇が良くなった」という結果が得られる、実態の伴う処遇改善が図られることを期待したいですね。
<文:宮下公美子 (社会福祉士・臨床心理士・介護福祉ライター)>
*厚労省 処遇改善加算、介護職員以外にも(毎日新聞 2018年10月15日)