介護職への慰労金、感染症対策経費の支援など「新型コロナ支援」が決定
6月12日に成立した令和2年度第2次補正予算では、介護分野の新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金も4,132億円が確保されました(*1)。
当初、医療従事者だけを対象とした交付金が取り沙汰されていましたが、介護職にも交付されることが決まっています。
この交付金では、介護施設・事業所に対して、以下の4つの支援が行われます。
(1)新型コロナウイルス感染症対策等での「かかり増し経費」への支援
(2)介護事業所や施設に勤務する職員に対する慰労金
(3)ケアマネジャーや在宅サービス事業所による、サービス休止中の利用者の利用再開支援
(4)感染症防止のための環境整備経費に対する支援
(1)の「かかり増し経費」とされる対象は、物品購入、研修の実施、消毒費用、人材紹介手数料、自転車・自動車の購入やリース代など、かなり幅広く設定されています。
また、利用者や職員に感染者がいなくても対象となります。
交付される金額の上限は、居宅療養管理指導事業所の3万3,000円から大規模型(II)通所リハビリテーション事業所の188万5,000円まで、1事業所あたりの支給上限額はかなり幅があります。
入所施設、居住系サービスやショートステイについては、定員数に応じて、1人あたり3万6,000円(認知症グループホーム)から4万8,000円(介護医療院)。
『実際にかかった経費』と『この上限額』のいずれか低い方の金額が交付され、
7月から各都道府県で申請の受付が始まる見通しです(*2)。
在宅サービスについては、(4)「感染症防止のための環境整備経費に対する支援」でも助成があります。密閉・密室・密接の「3密」を避けるために必要な飛沫防止パネル等を購入する費用等について、1事業所あたり上限20万円まで、さらに助成されるということです。
介護職の慰労金は、1人に5万円あるいは20万円
『慰労金』支給額は?
・感染者または濃厚接触者に対応した事業所の介護職:20万円
・上記以外の事業所の介護職:5万円
『慰労金』支給条件は?
・通算10日以上の勤務
(2)「介護事業所や施設に勤務する職員に対する慰労金」は、感染者が発生、または濃厚接触者に対応した事業所の職員には20万円、それ以外の事業所の職員には5万円が支給されます。
事業所がある都道府県で最初の感染者が発生してから、6月30日までの間に、
通算10日以上勤務している、「利用者との接触を伴い」かつ「継続して提供することが必要な業務」に就いている職員が対象です。
利用者へのサービス再開支援(ケアマネジャー、在宅サービス事業所)
・電話による確認:1,500円
・訪問による確認:3,000円
(3)「ケアマネジャーや在宅サービス事業所による、サービス休止中の利用者の利用再開支援」は、在宅サービス事業所が、過去1か月間利用を休止していた利用者に、ケアマネジャーと連携して(=1回以上電話等で連絡)安否確認や、感染対策に配慮した利用再開の調整等(=希望に応じた対応)を1回以上行い、記録を行っている場合に支給されます。
ケアマネジャーについても、過去1か月間利用休止中の利用者に1回以上、安否確認や希望するサービス確認、サービス事業所との連携(=1回以上電話等で連絡)を行い、記録に残した場合に支給とされています。
どちらも利用者1人当たり、
電話での確認の場合1,500円、訪問による確認の場合3,000円。
看護師に訪問での協力を得た場合など条件をクリアすると、利用者1人あたり最大6,000円が支給されます。これは。実際に利用の再開につながったかどうかを問わないとしています。
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利用者の同意が必要な新型コロナの特別ルールは、使いづらい?
新型コロナ関連では、感染拡大のこの間だけの特別ルールが様々設定されています。
たとえば、利用控えや休止による減収に配慮し、デイサービスには、利用者の同意を得られれば、
「電話で安否確認をしたら算定OK」「一定回数まで2区分上の介護報酬の算定OK」などの通知が。しかし、これについては、「事業者側からは利用者に言い出しにくい」と、事業者には大変不評です。
いっそ、「新型コロナ対策加算」という一時的な加算を、給付負担限度額範囲外、利用者負担なしで設けてくれたらいいのに、という声も聞きました。
そういう意味では、前述の4つの助成は利用者の同意を得る必要もなく、算定、算定外しの手続きが煩雑な加算より、事業者にとっては申請しやすいはず。
あとは、各事業者が、職員の慰労金の助成を受けたら、職員にきちんと配分してくれることを願うばかりです。
今、厳しい経営環境の事業所もあると思います。労使でよく話し合い、力を合わせて、このコロナ禍のもとでの事業継続とサービス提供に力を尽くしてほしいと思います。
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介護職にも知っておいて欲しい「助成金はどこから出ているか」
これら、かつて無いほどの大盤振る舞いとも言える様々な助成は、介護業界にとっては、大変ありがたいもの。しかし、このお金はもともと私たちが払った税金、そして、国の借金である国債の発行によって支払われています。
納税者である国民として、国のお金が正しい使い方をされているかどうかについて意識を向けることも大切です。
2020年度の税収は約63兆5,000億円。
これに対して、もともと約102兆6,000億円だった今年度の歳出は、1次補正予算で約25兆7,000億円、2次補正予算でさらに約32兆円が追加され、今年度の歳出は約160兆円まで膨れ上がっています。超過分は国債の発行でまかなわれていて、国としての債務の状況は、当初予算の時点で、GDP(国内総生産)の197%と、約2倍にもなっています。
いわば、「無い袖」を振りつづけたわけで、これらの債務はみな、私たちの子や孫の両肩に重くのしかかっていきます。
助成はうれしい。ありがたい。でも、ほんとうにこのような国の財政でいいのか――そのことを、私たち一人ひとりが考える必要があるでしょう。
<文:介護福祉ライター・社会福祉士・公認心理師・臨床心理士
宮下公美子>
*1
新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(介護分)の実施について(2020年6月19日 厚生労働省通知)
*2
厚労省、介護現場の感染防止策の追加経費を助成 全サービスが対象(JOINT 2020年6月22日)