介護職員の平均賃金『21万2455円』
介護職員(正規・非正規平均)の賃金は
『平均21万2,455円』※――介護労働安定センターが毎年行っている「介護労働実態調査」の2019年度調査の結果が、2020年8月7日に公表されました(*)。
※毎月決まって支払われる税込みの賃金額で、月によって支払額の異なる残業代や夜勤手当は含まれていません。
介護職員の賃金は思ったより多い?少ない?予想通り? いかがだったでしょうか。
介護の職場の労働者全体の月額賃金は、23万1,135円となっています。
下記の表の通り、介護の職場で最も高い賃金を得ているのは理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)などのリハビリ職。27万3,204円であり、看護職員の賃金26万7,533円を上回っているのですね。
一時期、リハビリ職は供給過多で飽和状態になる、という観測がありました。しかし今も介護の現場では、充足していないということかもしれません。
■月給で働く介護関係の労働者の賃金
労働者全体 |
23万1,135円 |
訪問介護員 |
21万2,281円 |
介護職員 |
21万2,455円 |
サービス提供責任者 |
24万6,373円 |
生活相談員 |
25万1,604円 |
看護職員 |
26万7,533円 |
介護支援専門員 |
25万7,279円 |
PT・OT・ST等 |
27万3,204円 |
管理栄養士・栄養士 |
23万8,311円 |
出典:介護労働安定センター「令和元年度介護労働実態調査」
介護業界は男女賃金格差が小さい「低平等」
介護業界で労働者全体の月額賃金を正規・非正規職員に分けてその平均を見てみると、正規職員の平均月額賃金は23万4,439円。これに対し、非正規職員の平均月額賃金は19万3,390円で、4万円以上の差があります。
介護現場での正規・非正規職員は完全な同一労働ではないと思います。それにしても、4万円の格差は大きいと感じます。是正されていってほしいですね。
一方、月額賃金を男女別で見てみると、男性が24万484円、女性が22万7,750円。その差は1万4,000円弱です。
産業界全体での男女の賃金差はどうかというと、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によれば、平成31年時点での産業界全体での平均賃金は、男性が33万8,000円(平均年齢43.8歳・平均勤続年数13.8年)なのに対し、女性が25万1,000円(平均年齢41.8歳・平均勤続年数9.8年)。
なんと8万円以上の開きがあります。
年齢や勤続年数の違いを差し引いても、産業界全体の男女の賃金格差は相変わらず大きいままだと感じます。この男女賃金格差と比べると、介護の職場は男女の賃金差が小さいと言えます。
しかしそれが喜ばしいことかというと、必ずしもそうではありません。
以前から指摘されていますが、介護や保育など、女性が多い職場の賃金水準は、一般産業界の女性の賃金水準に近いケースが多いからです。
いわば、
男女が「低平等」になっているとも言え、こちらも改善が必要だと感じます。
介護士として勤続20年を超えると賃金水準アップ
次に、月額平均賃金を年齢別、勤続年数別で見てみましょう。
年齢別で見てみると、
40代の賃金が最も高く、そこから緩やかに賃金額が下降していきます。この賃金データは、正規・非正規職員の平均値です。
訪問介護のヘルパーなど、50代以上は非正規職員が多いため、このような数値になるのかもしれません。
残念ながら、公表されているデータに正規職員のみの年齢別、勤続年数別のデータがないため、正確なところはわかりません。このグラフのみから、「介護労働者は年齢が上がると賃金が下がる」という誤解はしないでいただきたいと思います。
■月給で働く介護関係の労働者の年齢別賃金
(参照:介護労働安定センター「令和元年度介護労働実態調査」)
では、勤続年数別で見ると、月額賃金はどのような違いがあるでしょうか。
こちらは
勤続年数が長くなるほど、明らかに賃金水準が上がっていきます。
勤続20年以上となると、15年以上20年未満より一気に2万6,000円以上アップしていますね。
このくらいの年次になると役職に就いており、役職手当が支給されるようになっているからではないかと考えられます。
■月給で働く介護関係の労働者の勤続年数別賃金
(参照:介護労働安定センター「令和元年度介護労働実態調査」)
しかし、すべての介護職が役職に就けるわけではありません。特に、小規模法人の場合、ポスト不足という問題があります。
事業所規模と賃金水準は比例するわけではありませんが、下記のグラフを見ると、大規模事業所の方が、給与水準は高くなる傾向があります。役職ポストが多数用意されていることも関係しているかもしれません。
■月給で働く介護関係の労働者の法人規模別賃金
(参照:介護労働安定センター「令和元年度介護労働実態調査」)
大規模事業所、小規模事業所には、それぞれに美点も欠点もあります。こうしたデータも参考にしながら、今後の介護の現場でのキャリアパスを考えていっていただきたい思います。
<文:介護福祉ライター・社会福祉士・公認心理師・臨床心理士
宮下公美子>
*令和元年度 介護労働実態調査結果について(介護労働安定センター)