毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「お花見は辛い思い出」という話題について紹介します。
介護施設でのお花見イベント
3月21日、全国のトップをきって東京都心でソメイヨシノが開花。長かった冬がいよいよ終わりを告げ、待望の春がやって来た。
介護施設の中には、利用者を連れてお花見イベントを行う所も少なくないが、都内の介護施設で10年以上働くハヤシさんは、お花見イベントに辛い思い出があるという。
ハヤシさんが働くのは、都内でも高級住宅街と呼ばれる地域にある好立地の介護付き有料老人ホーム。
ホームの近所には、都内でも有数のお花見スポットがあり、毎年1回、利用者や家族を招いてお花見会を行うのが恒例になっている。
スタッフが分担して場所取りをし、お茶やお菓子、軽食などを用意して桜の花を愛でるのは、利用者のみならずスタッフにとっても楽しみな行事。
100歳の女性利用者に対する後悔
ハヤシさんはこう語る。
「お花見の時は、利用者1人にスタッフ1人が付き添い、車椅子を押して公園に移動します。ある年のお花見イベントの時、私は利用者の中でも最年長のサチさんというちょうど100歳の女性の利用者の担当になったんですね。
良い家柄の家に育ち、生け花の心得もあるサチさんは、普段から個室に必ず花を飾っているぐらいお花が大好きなおばあさま。ところが桜の花を見てもあまり嬉しそうな顔をなさらなかったんです」
そこでハヤシさんが、「どこか具合が悪いんですか?」「寒くないですか? ひざ掛けを持ってきましょうか?」などと尋ねると、サチさんはこう答えたそうです。
「桜はとってもキレイだけど、桜を見るといろんなことを思い出すわね。何年も前に京都に一緒にお花見に行った女学校のお友達ももういないし、去年のお花見会でおしゃべりした○○さんも亡くなっちゃったわ。
私も桜を見るのはこれが最後かもしれないわね……」
サチさんがそのようにつぶやくと、ハヤシさんは気の利いた言葉を返せず、結果的には本当にサチさんの最後のお花見になってしまったのだとか。
ハヤシさんによれば、誕生のお祝い会や年末年始のお楽しみ会のようなイベントでも、利用者から「これが最後……」というフレーズが飛び出すことはあるそう。
ハヤシさんは今でも、「あの時、なんでサチさんに『来年もまた一緒に桜を見ましょう!』と言えなかったんだろう…」と、悔やんでいるそうだ。
介護職であれば、似たような経験をしたことがある人もいるだろう。
高齢者は時にネガティブな発言をすることがあり、その言葉にどう対応するべきかを日々考えておいたほうがいいのかもしれない。