介護の世界で利用者さんを支えていくことをライフワークにしているT・Uさん。自分の体調と折り合いをつけながら、理想の介護を追い求めます。特別養護老人ホームやデイサービス、グループホーム勤務を経験しながら、居宅介護事業所を自ら開設するところまで行きつきました。そのTさんの軌跡を4回に分けてたどります。第1回目は、福祉系短大を卒業し、特養の仕事に目覚めたところまでをお伝えします。
*T・Uさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
T・Uさん(40歳)の転職経験
福祉系短大卒業後、特別養護老人ホーム(特養)に3年間勤務
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体調をくずし特養を退職。夜勤のないデイサービスに転職
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デイサービスでの仕事を1年ほどで退職。非常勤として特養に転職
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10カ月後、正職員となり、同じ特養に4年間勤務
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グループホームに転職、6年間をホーム長として過ごすが疲れて退職
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有料老人ホームに1年間、非常勤のケアマネジャーとして勤務
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特養時代の仲間と独立型の居宅介護事業所を開設、運営して4年目を迎える
待遇は良かったけれど、私には物足りなくて…
人と深くかかわる仕事がしたくて、高校卒業後は福祉系短大に進学しました。私は聴覚に少し障害があったこともあり、障害者の福祉施設で働くことに興味があったんです。しかし、いざ実習に出てみると、障害者の方の支援をすることに、私自身難しさを感じてしまいました。やがて、就職先をいろいろと検討している最中に、自治体の社会福祉事業団が特別養護老人ホームを開設し、職員を募集していることを知りました。応募者も多く難しい試験に、運よく合格したこともあって、「高齢者の支援を仕事にしてみよう」と心が決まりました。
短大では学問的には介護を学んでいましたが、実習は障害者の作業所。高齢者に接する介護の実務は、仕事を始めてから学びました。先輩に手取り足取り教わり、身につけました。自治体の社会福祉事業団は、とても恵まれた環境です。給料はいいし、ほかに比べて仕事にも余裕があるとよく言われます。うらやましがられる職場ですね。
しかし、どこか「お役所的」なムードがあり、先進的な考えは通らない、と実感することがしばしばでした。現状のルールはこうだけれど、利用者さんにとってはこっちのほうがいい、とわかっていても、「前例がない」となれば実行されません。提案しても、「そうだね、検討しておくよ」と言われたまま進展しないことがほとんどでした。
職場の人間関係はとても穏やかでよかったのですが、意欲のある人はどんどんやめてしまいます。残るのは、「波風立てずにのんびりやりたい」という気質の方がほとんど。私自身、体調に少し不安がありますが、全力で仕事に向かいたいタイプ。ラクだけれど活気がないその雰囲気に、自分が埋もれていくことにジレンマを感じていました。
そのストレスが原因だったのかわかりませんが、もともとあった聴覚障害に影響が出てしまい、だんだん耳の聞こえが悪くなってしまって。ドクターから一時仕事を休んだほうがいいのではないか、とアドバイスをもらいました。私としても、中途半端な気持ちのまま働くより、一度休んで耳の調子をよくしてから、仕事に没頭したほうがいいのではないか、と思い始めて…。入職から3年たったところで、特養に退職届を出しました。
退職したのに、すぐ働きたくなって
でも、介護の仕事が好きなんですよね。2カ月ほど休むと、もう働きたくてたまらなくなって。親からは「もう少し休んだら?」と言われましたが、介護事業所の求人を探し始めました。とはいえ、フルタイムで夜勤がある、というハードな働き方にいきなり戻るのはつらいだろうと思い、近くのデイサービスに非常勤で働き始めたんです。
でも、私、どうもデイサービスは肌に合いませんでした。レクリエーションで高齢者を盛り上げるより、日々の生活の中で寄り添って支援がしたいんですよね。特養って、終の棲家じゃないですか。この先の人生を過ごすための穏やかな支援をすることが、私には合っているんだな、と、特養から離れてみて痛切に思いました。それで、デイサービスを1年でやめて、近くの特養に転職。まだ夜勤に自信がなかったので、やはり日勤メインの非常勤でした。
ふたたび特養で働いてみると、「ああ、戻ってきたんだなぁ」と感慨深かったですね。特養の利用者さんはおおむねかなり高齢で、さまざまな欲から解放され、穏やかな表情でのんびりとすごされる方が多いんです。その笑顔に癒され、介護しているのに、実は包んでいただいているような気さえして。ああ、この感じが好きなんだ、と実感しました。体力的にもかなり回復し、さあ、もう一度特養というフィールドで、精一杯働こう! という意欲に満ちてきました。そこで私は、非常勤だった立場を、正職員に変えて、もう一度働き始めたんです。
次回は、介護福祉士やケアマネジャーの資格を得て本格的に介護に取り組むTさんの状況をお伝えします。
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