訪問入浴の新人アシスタントから、瞬く間に所長代理、そして所長へ。
その後も信頼されて所長職を5年半続けてきたUさんですが、順調すぎるあまり別の仕事をしたくなり、老人保健施設や、障害者施設などに転職します。
そのさまざまな経歴の裏には、とても真摯な思いがあります。
Uさんの3回目の連載では、その「仕事観」をお聞きください。
*U・Hさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
U・Hさん(40歳)のプロフィール・転職経験
●介護業界歴…16年
●介護の仕事に就く前…ファミレス副店長、運送会社運転手、営業職
●介護業界での転職回数…6回
●いままでの勤務先…訪問入浴・訪問介護事業所、介護老人保健施設、大手介護関連企業
●保有資格…介護福祉士
だれとでも真摯に付き合うことがポリシーに
名古屋の訪問入浴事業を拡大させ、所属する訪問事業者から認められて、事業所の所長代理になりました。
その後、岐阜にある訪問介護事業所の新規立ち上げのときに、所長として迎えられたのですから、出世と言っていいかもしれません。
短い間に所長になり、周囲にも驚かれました。
ここでは、利用者さんを獲得することが私の大きな仕事なわけですが、はじめての土地で、なかなか受け入れてもらえません。
主に、地域の居宅介護支援事業所で、ケアマネジャーさんにうちの事業所を知っていただくために営業をするのですが、既存事業者が多い地域で、苦戦続きです。
土曜日にも営業活動をしました。
でも、さすがに土曜日は営業先も閑散としていて。
居宅介護支援事業所に出かけても、人がほとんどいない状況です。
ある介護事業所を訪ねたときには、掃除のおばさんしかいませんでした。
「だれもいないわよ」とそっけなく言われたのですが、とにかく礼儀正しくして、チラシをその掃除のおばさんに渡し、おじぎをして出てきてため息をつきました。
この営業は意味がなかったかなと。
しかし、数日後、その事業所から利用者さんを紹介してもらったのです。
びっくりしました。
掃除のおばさんだと思っていた人は、その事業所のリーダー格のケアマネジャーで、地域に最も顔が利く人とも言われていたのです。
「どんなときでも自分の態度を変えず、丁寧に真摯に接する」を営業ポリシーにしてきてよかった。
心底思いましたね。
そんなスタートを切ったからか、事業は順調にすすみ、実績もついてきました。
後発の事業所なのに、地域では信頼され、口コミが口コミを呼んで、確実に利用者さんをふやせるようになりました。
しかし、順調に行き過ぎるとつまらなく感じてしまうのが、私の悪い癖です。
所長になって5年半を過ぎると、事業へのモチベーションが落ちていくのを感じました。
このままでは事業所にも迷惑が掛かると思いました。
後輩を育て、自分がいなくても事業所が回ることもわかっていたので、思い切って辞職することにしました。
辞めたら九州に行こうと思っていました。
首都圏で育ち、南のほうで暮らしたことがないですし、旅行好きなのに、なぜか九州にはあまり縁がなかったので、住んでみたいと思ったのです。
仕事のことを考えたら福岡がいいかなと思い、福岡にアパートを借りてから仕事を探し始めました。
老健を辞め、障害者施設に転職…そしてトリプルワークに
株式会社で働いていたので、経験を積むためにも、今度は社会福祉法人で働いてみようと、気軽に考えて介護老人保健施設の介護職リーダーとして入職しました。
しかし、私には合いませんでした。
そこがたまたまそういうところだったのかもしれませんが、みんな、与えられた時間をただラクに働ければいいと思っているようでした。
株式会社では、事業が発展しなければ意味がない、というスタンスだったので、この仕事への意欲のなさに驚きました。
フロアスタッフには「時間を有効に使ったほうがいい」「利用者さんの意図を汲もう」「ひとりひとりに最適な介護をするために利用者さんとしっかりと話そう」と、折りに触れて言いました。
しかし、ちっとも伝わりません。
やはり自分にはこういう職場は合わないと感じ、障害者福祉施設に転職をしました。
ここは真摯な介助をしていました。
が、自分にとっては暇すぎる(笑)。
9時から5時までの勤務を月曜から金曜日。
残業はなし。
時間を持て余しました。
この先、どうしようかと考えながら中洲で飲んでいると、そこで知り合った方に「夜の仕事の送迎の仕事をしないか」と誘われました。
暇だからやってみようかということに。
ダブルワークです。
そのうち、以前働いていた介護運営会社の幹部から連絡がありまして、地域の訪問入浴の仕事をしないかと言われました。
ちょうどこの時期に、別の事業者の訪問入浴にも関わることになりました。
この事業者の訪問入浴のリーダーが産休で休むことになったので、社員として誘われました。
土曜日を中心に手伝い、ここでも事業を発展させました。
一時はトリプルワークになっていました。
この頃、そろそろ身を固めたい、と思っていました。
いつまでもふらふらしている年ではないと、意識するようになりました。
30代も半ばを過ぎ、結婚したい人も出てきました。
遠距離恋愛で、彼女は首都圏在住。
そろそろきちんとしたいと思い、彼女の親御さんに認めてもらうためにも、もう一度介護業界での出世を試みることにしました。
そこで、障がい者施設を辞め、誘われた事業所に転職しました。
最終回の次回は、株式会社の介護運営企業の本部職員としての心境を語ります。
<三輪 泉(ライター・社会福祉士)>
*U・Hさんの「私が転職した理由」…
1回目、
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