やっぱり、と思った方も多いのではないでしょうか。
2017年4月から全ての市町村で開始になった、「介護予防・日常生活支援総合事業」(以下、総合事業)のうち、ボランティアなどが提供する住民主体型サービスの担い手が、非常に少ないことが明らかになったのです(*)。
「介護予防・日常生活支援総合事業」とはどのようなものか
総合事業がどういうものか、ここでちょっとおさらいしておきましょう。
○各市町村が市町村事業として住民に提供している介護予防のサービス
○要支援1、2の人が利用する訪問介護と通所介護が介護保険サービスからはずれて、総合事業の枠組みの中で提供されることになった
○訪問介護と通所介護の総合事業は、準備ができた市町村が2015年4月から段階的に始め、2017年4月からは全市町村で提供している
○総合事業のサービスには、以下の5つがあるが、地域の実情に応じて整備し、5つ全てを揃えなくてもよいとされている
(1)国基準のサービス…もともとの介護保険サービスと同じサービス
(2)訪問型サービスA・通所型サービスA…人員配置などの基準を緩和したサービス
(3)訪問型サービスB・通所型サービスB…住民主体型サービス
(4)訪問型サービスC・通所型サービスC…短期集中で提供する専門職によるサービス
(5)訪問型サービスD…移動に関する生活支援
○2017年3月末で、介護保険サービスに、要支援1、2の人を対象とした訪問介護と通所介護はなくなった
担い手が少ないことがわかったのは、このうちの住民主体型サービスである、(3)「訪問型サービスB・通所型サービスB」です。
記事によれば、これまで介護保険サービスを提供していた事業所などが、前述の総合事業のサービスに参入しています。
しかし、そのうち住民主体型サービスに参入したのは、2016年10月時点で、訪問型サービスでは3.9%、通所型サービスでは12.9%だったというのです。
2017年4月に全面開始、評価するにはまだ早い
住民主体型サービスには2つの目的があります。
一つは、介護の担い手不足を、元気な高齢者を含む住民に活躍してもらうことで解消したいということ。
もう一つは、サービスを提供する元気な高齢者自身の介護予防を図ろうということです。
その目的自体は良いと思いますが、もともと住民活動が盛んに行われているところとそうでないところでは、このサービスへの取り組みにも、当然、地域差が出ることは予想されていました。
そのため当初から、利用希望者にサービスとして紹介できるほどの数を整備できるのか? そもそも、利用したいという人がどれぐらいいるのか? など、様々な声がありました。
市町村も住民を対象に、サービス主体となってもらうことを意図した講座を行ったり、地域で互助的な活動をしている住民にサービス主体にならないかと声をかけたりしていたようです。
一方で、「住民主体で提供するサービスに、要支援の人のケアを任せるわけにはいかない」と、住民主体型サービスは行わない方針の市町村もあります。
3.9%、12.9%という参入率は、確かに少ないですが、そもそもどれほど参入があることを見込んでいたのか、という声もあります。
新聞記事によれば、訪問型サービスは、参入の全体数が3141カ所。そのうちの約122カ所が住民主体型サービスを提供しているという計算になります。
2015年4月から市町村での取り組みを開始して、わずか1年半で122カ所も住民を主体としたサービスが稼働していることを、評価してもいいのではないでしょうか。
どちらかと言えば、批判的な声が多い総合事業ですが、全ての市町村で取り組み始めたのは2017年4月から。まだ始まったばかりです。
総合事業を始めることで、これから地域が変わっていくのかいかないのか。結論を急がず、まだしばらくは見守った方がいいのかもしれません。
<文:宮下公美子 (社会福祉士・臨床心理士・介護福祉ライター)>
●こちらの記事も参考に
→ 介護保険から外れた「要支援向け訪問・通所介護」。市町村での進み具合は?
*軽度介護サービス 参入低調 「訪問」住民主体型は4%(毎日新聞 2017年5月18日)