外国人介護士の受け入れを拡大へ。永住資格変更も検討
介護など14業種の外国人材受け入れを拡大する出入国管理及び難民認定法(入管法)の改正法案が、2018年11月2日、閣議決定され、国会に提出されました。
可決成立すれば、2019年4月から初年度は4万人程度の外国人材の受け入れが想定されています(*)。
新聞等で大々的に報道されていますが、なぜそんなに注目されているのでしょうか?
これは、これまで最大5年間だった、「外国人技能実習制度」で受け入れている技能実習生について、一定以上の技能を持つ人材に、事実上の永住資格を与える法案だからです。
といっても、介護分野に関しては、一足先に基準をクリアした外国人介護士に事実上の永住資格を与えています。
「経済連携協定(EPA)」でインドネシア・フィリピン・ベトナムから受け入れてきた介護士のうち、介護福祉士の資格を取得した人には、2017年9月から、更新回数に制限のない在留資格が与えられているからです。
EPAで受け入れている外国人介護士は、一定の日本語教育を受け、日常会話程度の日本語は身に付けています。また、来日後、日本の生活習慣や文化についての研修も実施されています。
受け入れ法人では、さらに日本語教育を行ったり、介護福祉士試験受験を支援するための勉強会を行ったりしているところもあります。日本人と同等以上の処遇が義務づけられており、労災や健康保険など、社会保険も適用されます。
EPAでの外国人介護士の受け入れについては、一定水準以上の受け入れ体制が整えられていると言えるでしょう。
「外国人技能実習制度」による外国人受け入れには問題点も
一方、今回話題になっている「外国人技能実習制度」。
これは、もともとは日本が先進国として、開発途上国からの実習生を受け入れて技術移転を進め、人づくりに貢献するためにつくられた制度です。
しかし実態としては、受け入れ側では人手不足を補うことが目的化されています。来日する外国人労働者も、技術を学びたいという人だけでなく、出稼ぎ目的の人もいると言われています。
技能実習制度では、EPAでの介護士受け入れのように、決められた受け入れ体制はありません。
各受け入れ機関で「技能実習実施計画」の策定は求められていますが、そこに組み込まれるのは、農業や建設業などの身につけるべき「技能」。日本語教育や日本の文化・生活習慣を学ぶ機会は想定されていません。
技能実習制度で来日している技能実習生の中には、過酷な労働条件での労働を強いられているケースも指摘されています。
2017年10月末時点での技能実習生の総数は約26万人ですが、2018年度の上半期で約4000人の実習生が失踪しているという実態があります。
新たな在留資格が創設へ。技能実習制度の課題は解決する?
今回、入管法が改正されると、新しい在留資格として「特定技能1号」「特定技能2号」が創設されることになります。
▼特定技能1号
A:一定以上の技能レベルと日本語能力を持つことを「試験」によって確認
B:3年以上最長5年の技能実習経験により、無試験で取得できる
→ 5年間滞在できるようになるが、家族を呼び寄せることはできない。
▼特定技能2号
A:熟練した技能レベルがあることを「試験」によって確認
B:「特定技能1号」を取得してさらに5年間技能実習経験を積み、「試験」に合格したら取得できる
→ 在留資格を無制限に更新可能で、事実上、日本に永住可能になる。家族も呼び寄せられる。
実施される「試験」がどのような内容になるのかはまだ検討段階とのこと。介護なら厚生労働省など、所管する官庁が試験を担当するようです。
今回、介護は、「特定技能1号」の受け入れ業種として候補に挙げられています。
EPAで受け入れてきた介護士の人数は、累計3500人程度。とても人材不足を補うことはできず、今回の新しい在留資格での受け入れも行うことになったようです。
「特定技能」の外国人労働者の受け入れに当たっては、技能実習制度では不十分だった日本語教育や生活支援などが、整備されるよう。その内容は検討段階なのに法律だけが先行するのでは、来年4月からの受け入れに不安があります。
実際、どのような受け入れ体制が整備されるのか。注意して見守りたいですね。
<文:宮下公美子 (社会福祉士・臨床心理士・介護福祉ライター)>
*入管法改正案 外国人材、初年度4万人想定 法案閣議決定(毎日新聞 2018年11月3日)
外国人介護士の受け入れについては、こちらの記事もご参照ください。
⇒「外国人介護職の誕生で、介護の未来は変わる?介護人材不足解消の鍵となるか」