毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「有料老人ホームで起きた、一斉メールの恐怖」という話題について紹介します。
“職員教育に熱心”な介護付き有料老人ホーム
介護施設で働く職員にとっては、情報の共有がとても大事。複数の職員が1人の利用者をケアする以上、申し送りがとても重要になる。
情報を共有する方法は、ミーティング、ノート、ホワイトボードなどさまざまだが、スタッフ全員で情報を共有するためにもっとも有効な手段のひとつがメールだろう。
ところが、都内のある介護付き有料老人ホームでは、一斉メールを巡ってとんだ騒動が持ち上がったという。
“事件”が起きたのは室数が30で、スタッフが20名程度の介護付き有料老人ホーム。施設は都内でも高級住宅街と呼ばれる地域にあって、入居者も富裕層が多い。
施設側は社内研修を定期的に行い、職員教育に大変力を入れていた。
そうした甲斐もあって、スタッフの定着率は大変良好。施設内には家庭的な雰囲気が溢れており、入居者や家族の満足度も非常に高かった。
施設で働くオサムさんが語る。
「私は今の施設で3か所目の職場ですが、この施設ほど職員教育に熱心なところは初めてです。
研修旅行は泊りがけで行われますし、理解度や到達度を確認するペーパーテストもあって、一定の点数に達しないと“再テスト”になります。
ただ、それに合格すると、給与に反映される仕組みになっているので、とてもやりがいがあります」
はたから見ても、何一つ問題ないように思われるこの施設。
だが、職員の人間関係が良好かつ緊密だったことで、ある問題が持ち上がったそうだ。
女性介護職の突然の退社、そして一斉メール
「ある日、それまでまったく辞める気配のなかったある女性スタッフが、朝のミーティングで『今日で辞めさせて頂きます。長い間ありがとうございました』と挨拶し、唐突に辞めてしまったんです。
仲良くやっていると思っていたので、とても驚いたのですが、人にはいろいろな事情がありますから、辞めるのは仕方がないこと。そう思っていると、その日の夕方、その女性からスタッフ全員に一斉メールが届いていたんです。
そのメールは、スタッフ同士の不倫を告発する内容で、丁寧に証拠画像まで添えられていました」
辞めた女性スタッフは、もともとその男性と付き合っていたものの、既婚者の女性スタッフに男性を取られてしまい、怒りの一斉メールを送ったのだった。
オサムさんがいう。
「その2人は研修旅行で親密になったみたいなんです。研修旅行は、社員教育はもちろん親睦も兼ねているんですが、仲良くなりすぎちゃったってことですよね……」
熱心な社員教育が、結果的にスタッフの人間関係にヒビを入れたとは何とも皮肉なこと。
オサムさんによれば、“事件”の後、施設長から「業務に関係のない一斉メールは送らないように」という内容の一斉メールが届いたそうだ。
もちろんその2人も厳重注意され、その後、2人はいづらくなり辞めてしまったという。
こんなことで退職に追い込まれることがないように、人間関係には十分注意をしたいものだ。