毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「広い家なんていらない?」という話題について紹介します。
共働きで貯金して、夢は「庭付き一戸建て」!
多くの人にとって、一生で一番高い買い物といえば「家」。マイホームを手に入れるために懸命に働いているという人も少なくないだろう。
都内の介護付き有料老人ホームで働くコジマさんも、マイホームに憧れていた人間のひとり。
夫婦共働きでせっせと貯金をし、「いつかは庭付き一戸建てを」という夢を持っていたが、その考えが揺らぎつつあるという。
コジマさんは現在30代で、夫、子ども2人と暮らす4人家族。夫は会社員で、平均以上の稼ぎがあるが、それでもコジマさんが働きに出ているのは、「自分たちの家が欲しい」という目標があったからだ。
コジマさんが語る。
「私は東京生まれ、東京育ちという生粋の都会っ子ですが、住宅事情は酷いものでした。
4人家族だった実家のマンションは2LDKで、私は18歳まで2段ベッドで寝ていました。その後、専門学校に進んで一人暮らしをしましたが、その部屋は北向きのワンルームマンション。
『将来は絶対、広い家に住んでやる!』と、ずっと思って生きてきました」
その後20代後半で結婚し、自分の夢を夫に語ると、夫は理解を示し、「家を買おう」ということに。
色々な物件を見るうちに、「もう少し広い部屋を」「どうせなら一軒家で」と、どんどん夢は広がり、せっせと貯金をしてきたという。
広い家が欲しいという気持ちが揺らいだコジマさん。その理由は?
そんなコジマさんだが、入居者と接しているうちに、「本当に広い家なんているのかな?」と、疑問を感じ始めたそうだ。
「ある時、入居者の方と住まいの話になり、私が『家が欲しいんです』と言うと、その方は真剣な顔をして、『大きな家を買おうなんて思っちゃダメだよ』と言うのです。
『子どもなんて出ていっちゃうんだから』と語るその方は40代で家を建てたものの、家族4人が揃って住んだのはわずか6年ほど。子ども2人が進学や就職で地方や海外に行ってしまったため、今では子どもの部屋はただの物置になってしまったのだとか。
しかも、無理をして大きな家を建てたため、固定資産税も大変だったそうです」
その話を聞くまで、「いつかは家族構成が変わる」という発想がまったくなかったというコジマさん。
「それでも広い家の方が良いでしょ」と思っていたが、人生の先輩たちの意見を聞くうちに、それも間違いだと思うようになったという。
部屋は狭い方が良いって本当?
「入居者の方と話していると、よく聞くのが『部屋は狭い方が良い』という話です。
ウチの施設はすべて個室で、部屋は8~12畳のワンルームにお風呂とトイレが付いたタイプ。大学生が一人暮らしで住むような間取りで、いかにも狭そうに見えます。
でも、入居者の方からは『これぐらいの広さだと掃除が楽ね』『物がなくならないわ』というセリフをひんぱんに聞きます。
最初は、狭い部屋に来たことを前向きに捉えようとしているのだと思っていましたが、どうやら本当にそう思っているようです」
そういった話を繰り返し聞くうちに、広い家が欲しいという気持ちはすっかり萎んでしまったものの、そのことを夫に言い出せず、困っているのだとか。
しかも、広い家を買うつもりがないのであれば、もはやコジマさんが共働きする必要もないはず。
しかし、入居者とのおしゃべりから学ぶことは多く、コジマさんは今日も介護スタッフとして奮闘しているそうだ。
公開日:2019/1/21
最終更新日:2019/6/4