■書名:最強の介護職、最幸の介護術
■著者:山口晃弘
■発行元:ワニブックス
■発行年月:2014年10月25日
>>『最強の介護職、最幸の介護術』の購入はこちら
介護職は最強のビジネスパーソン! 17のエピソードが介護の魅力を伝える
介護の仕事に行き詰まりを感じたり、迷いを感じたとき、この本を開いてみてほしい。ここには、介護の現場で働く人に力を与えてくれる言葉やエピソードが詰まっている。
本書に綴られている介護論は、世田谷区にある特別養護老人ホーム「さつき荘」で介護職、生活相談員を務めた著者が、自らの経験を通して形成したもの。印象的だったのは、介護の仕事をしていることについて「偉いですね」とか「大変ですね」と言われるよりも、「凄いですね!」と言われたいという言葉だ。そこには、介護職は職業人として「最強」と信じる強烈な自負がある。
<私が、介護職を「最強のビジネスパーソン」と言い切るのは、これだけ数多くの能力を必要とする仕事は他にないと言えるからである。>
その能力として、マーケティングセンスやリスクマネジメント力、綿密な計算に基づいたエンターテイメント力などを上げ、介護職の高いスキルとポテンシャルを証明していく。それらは他業種のビジネスシーンにおいても十分に通用するものであり、これからの日本に必要な力だと説く。
著者の言葉に説得力を与えているのが、各章に散りばめられた、特別養護老人ホーム「さつき荘」を舞台にした“最幸”の介護エピソードだ。そこには、涙もあれば笑いもある。リアルな介護の最前線と、そこで格闘する介護スタッフ、最期の日々を過ごす入居者の姿が描かれ、現在の福祉のあり方への警鐘にもなっている。死をタブーにせず、生きる意味と向き合うスタッフたちが、それぞれのエピソードを通じて成長していく姿は胸を打つ。
エピソードのひとつで、著者の介護観を変えたという、入居者のひと言が紹介されている。
それは、自暴自棄になっていた入居者が、大ファンだった歌手のコンサートに行くためにリハビリを頑張り、夢を叶えたときに発した、「まさか私の人生に、まだこんなことが待っているとは、思ってもみませんでした!」という言葉。「この言葉をすべての高齢者の口から聞きたい」という思いが、その後の著者の背中を押すのだ。
同様な“最幸”のエピソードは、全国のさまざまな介護現場でもあるに違いない。しかし、自分たちが行っている介護の魅力やポテンシャルに気づいていない人も多いのではないだろうか。
<頑張って生きてきた人の苦労が、晩年、報われる。最高の幸福が待っている。そんな国が良い国だと思う。生まれ変わるなら、もう一度この国に生まれてきたい。そんなふうに思える国にしたいのだ。それを実現できるのが、介護職という職業である。>
この本は、介護の現場で働く人たちへの熱いエールだ。そのエールが、あらためて「どんな介護をしたいのか」「どんな介護現場を作りたいのか」を自分に問うきっかけになるに違いない。
すでに介護職として頑張っている人だけでなく、介護という仕事に興味を持っている人にも、一読をおすすめしたい。
<小田>
著者プロフィール
山口晃弘(やまぐち・あきひろ)さん
1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、社会福祉法人 老後を幸せにする会「特別養護老人ホームさつき荘」に介護職として入職。その後、生活相談員を務める。現在、同法人「グループホーム奥沢・共愛」管理者として活躍中。介護福祉士、介護支援専門員(ケアマネジャー)。