2016年03月11日

『認知症患者の摂食・嚥下リハビリテーション』 | 「介護求人ナビ　介護転職お役立ち情報」

■書名：認知症患者の摂食・嚥下リハビリテーション
■著者：野原幹司（編著者）、山脇正永、小谷泰子、山根由起子、石山寿子
■発行元：南山堂
■発行年月：2011年11月15日

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認知症の特徴を理解し、介護現場で役立つ摂食・嚥下リハビリを学ぼう

「食べることは生きること」。「口から食べる」とは、生活の楽しみやコミュニケーションという点からも重要な意味を持つ行為。それを支援するのが摂食・嚥下（せっしょく・えんげ）リハビリテーションだ。
年をとると、筋力の低下もあり、かむ・飲み込むなどの機能が衰えていく。さらに認知症の症状が加わる介護の現場は、その対応が難しい。実際に対応に苦労し、行き詰まっている介護職も多いのではないだろうか。

これまでの一般的な嚥下障害について書かれた本では、認知症の利用者に当てはまらないケースが多かったという。それは、多くの本が「脳梗塞を起こした患者の回復期」を対象にした内容だったからだ。

＜意思疎通が困難であることが多い認知症例に対しては、訓練や機能回復という概念ではなかなか太刀打ちできない。機能回復を目指すと、症例本人だけでなく、介助者や医療者も消耗し、無力感を味わうことになる。＞

＜嚥下機能を回復させることを目的にリハを行う（キュア）のではなく、現在の機能を最大限に引き出しつつ、安全に経口摂取できるように介助・支援する（ケア）ことが求められている。＞

「キュア＝回復させる」ではなく、「ケア＝介助・支援」という考え方から書かれたのが本書。介護現場で役立つ“認知症高齢者のための”嚥下リハビリテーションを体系づけた一冊となっている。執筆陣は、顎口腔機能治療に携わる野原氏をはじめ、言語聴覚士の石山氏、摂食・嚥下障害看護認定看護師の山根氏など、専門分野のメンバーたち。臨床現場のノウハウがギュッと詰め込まれた実戦的なテキストだ。

本書は、「理論編」と「実践編」の二部構成になっている。

「理論編」では、認知症の嚥下リハビリの考え方から始まり、認知症タイプ別の嚥下の特徴、食事時の観察のポイント、具体的な嚥下訓練、食事支援、リスクマネジメント、終末期の対応までを網羅。全体像が学べるようになっている。

どの内容も、認知症ならではの特徴をふまえたものだ。
たとえば、認知症が軽度のときは食べるという行動自体への障害が多い。しかし、重度になると嚥下（主に飲み込み）障害が目立ってくる。食事支援の章では、そうした認知症のステージに合わせた支援の方法を紹介。ここに書かれた考え方を頭に入れることで、実際の介護現場で応用が利くように書かれている。

そして「実践編」には、「食べるペースが早い」「食べ物を飲み込まない」「食事のとき口を開けない」など、現場で遭遇することの多い30症例を紹介。症状ごとの重要ポイントに加え、看護師と言語聴覚士がそれぞれの立場から対応方法を解説している。

症例ごとに、関連する「理論編」のページが示してあるのも便利だ。現場で困った症状に遭遇した際、「実践編」で解決法を探し、そこから「理論編」に立ち戻ることも可能。さらに理解を深めることができるだろう。

嚥下障害だけでなく、認知症の特徴について勉強したい人にとっても参考になる一冊だ。

＜小田＞

著者プロフィール

＜編著者＞
野原幹司さん
大阪大学歯学部附属病院顎口腔機能治療部医長

＜著者＞
山脇正永さん
京都府立医科大学総合医療・医学教育学教授

小谷泰子さん
医療法人美和会平成歯科クリニック院長

山根由起子さん
名古屋第二赤十字病院神経センター

石山寿子さん
南多摩病院リハビリテーション部

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