■書名:シルバー川柳5 確かめるむかし愛情いま寝息
■著者:公益社団法人全国有料老人ホーム協会 (著)、ポプラ社編集部 (著)
■発行:ポプラ社
■発行年月:2015年9月8日
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衰える容姿・肉体・知力を明るく笑いとばす88句の川柳を収録
「シルバー川柳」は2001年に、社団法人全国有料老人ホーム協会の設立20周年を記念してスタートした企画。
老いを肯定的にとらえてほしい、笑いをもって日々を楽しく過ごしてほしいという思いから始まったもので、2015年の応募作は1万1,899句。その中から選ばれた88句を(入選作20句を含む)を収録している。
川柳の題材として、最もよく使われるのは、容姿・肉体・知力の衰えといったものを自虐的に詠んだものだという。また、時事的なキーワードが盛り込まれるものも多い。例えば下記のようなものだ。
●壁ドンで ズボンの履き替え やっとでき
●マイナンバー ナンマイダーと 聴き違え
●オレオレを 待ってましたと お説教
「壁ドン」「マイナンバー」「オレオレ詐欺」といった流行語や時事キーワードを、加齢に伴う体の各所の衰えに絡めて詠んでいる。
また、今回の応募作は「家族」をテーマにしたものも多く寄せられたという。
●会社やめ いつのまにやら 妻の部下
●浪花節 何のだしかと 嫁が聞き
●アマゾンで 買ったという孫 いつ行った
定年後の夫の身の置きどころがない様子や、嫁とのジェネレーションギャップ、孫とのふれあいを詠んだものを掲載している。
他にも、「死」に関する川柳も掲載している。
●アルバムに 遺影用との 付箋あり
●戒名の 好みを坊さん 聞きに来た
●あの世へも 方向音痴で まだ行けず
高齢者に「死」をイメージさせる言葉は不謹慎だと思われがちであるが、川柳で表現すると、カラッと明るく聞こえるから不思議だ。
もちろん、介護サービスを題材にしたものもある。
●デイケアで 悪い嫁ほど 自慢でき
●判定日 母凛として 要支援
●ヘルパーに 抱かれたじいちゃん 赤くなる
介護施設のスタッフであれば、思い当たるシチュエーションで、クスッと笑ってしまうのではないだろうか。
本書のあとがきで「シルバー川柳」への思いが書かれている。
<老いを前向きに生きてほしい、人それぞれに悩みや不安はあっても、家族や仲間と笑いにして共有することで、少しでも毎日を楽しく過ごしてほしい>
川柳は高齢者にも読みやすい文字の大きさなので、利用者とのコミュニケーションにも役立ちそうだ。川柳づくりを皆で楽しむなど、レクリエーションに取り入れることもできるのではないだろうか。
執筆者プロフィール
公益社団法人全国有料老人ホーム協会
有料老人ホーム利用者の保護と、事業の健全な育成を目的として、1982年に設立。老人福祉法に規定された唯一の法人として、入居者の生活保証事業の運営、苦情対応、事業者への運営支援、職員研修など多岐にわたる事業を行う。