全国の総店舗数が5万件を超え、どこに行っても目にするコンビニ。そのコンビニ業界が今、顧客としての高齢者に注目し始めています。ローソンは、2015年4月に介護サービス会社、ウイズネットと提携。ケアマネジャーが常駐して介護相談や、介護サービス・有料老人ホームなどの情報提供を行う店舗を、埼玉県川口市にオープンしています。今後も提携先が見つかれば、全国30店ほどに増やしていくとのことです(*1)。
ローソンは、また、佐川急便を傘下に持つSGホールディングスと共同出資による「御用聞きサービス」も東京・世田谷で開始(*2)。飲料や弁当などローソン店頭で取り扱っている商品や、トイレットペーパーなどの生活雑貨を最短で注文の翌日に配送。水回りのトラブルへの対応やハウスクリーニング、家事代行事業者などへの取次も行うとのことです。
コンビニ各社が高齢者に接近中!
一方、業界最大手のセブン‐イレブン・ジャパンでは、宅配弁当の「セブンミール」を365日自宅まで配送。一部店舗では、自治体と連携して安否確認も行っています。ファミリーマートはドラッグストアと一体型の店舗の出店や、高齢者向けの配食サービスを手がける会社を子会社化。また、サークルKサンクスでは、介護食や杖など、介護用品のカタログから商品をインターネットや店頭で申込み、店頭で受け取れるサービスを行っています。
少子高齢化が急速に進むこれから、小売業界は、購買力はあっても数が減っていく若者ばかりに注目しているわけにはいきません。日本で一番お金を持っている年齢層は、実は高齢者層。そこに注目し、コンビニは高齢者のニーズに応えられる店作りを着々と進めているのです。
コンビニは地域の大切な力になる
全国津々浦々にあり、24時間、あるいは、早朝から深夜まで必ず人がいる、というのがコンビニの素晴らしいところ。コンビニは、今や立派な「地域資源」です。今、政府が強力に推進している「地域包括ケアシステム」の構築においては、「地域資源」を活用することが大切です。だとすれば、コンビニを活用しない手はありません。
自治体と提携、とまではいかなくても、コンビニが地域での高齢者の見守りに一役買うこともあります。ある自治体では、地域住民の介護の相談窓口である地域包括支援センターがコンビニと連携を密に取り、「高齢者の見守り」の目となってもらうケースがあります。
たとえば、体調を崩しやすいのに、1人暮らしで見守りの目がない高齢の女性。異変があったときの対応に苦慮していた地域包括支援センターの職員は、この女性が、毎日、近くのコンビニに買い物に行くことを知りました。そこで、コンビニに依頼し、いつも来店するこの女性が来なかったときには、連絡してもらうことにしました。幸い、今のところ体調に異変はありませんが、「何かあってもすぐに対応しやすくなった」と、地域包括職員。「これからもこうした地域の力を借りていきたい」といいます。
かつての日本であれば、近所の人や地域の商店街が、こうした役割を自然と担っていたことでしょう。しかし、現代は多くの地域で、地縁、血縁が薄らいでいます。地域のコンビニには、こうした役割が期待されており、そしてコンビニもまた、それを担っていこうとしているのです。配食サービスの提供、介護用品を含むさまざまな生活用品や食品の販売、日々の見守りの目。コンビニは、高齢者にとっての身近なサービス拠点として、まだまださまざまな可能性を発揮してくれそうです。
<文:宮下公美子>
*1 「介護ローソン」1号店がオープン、玉塚社長も登壇 (日経デジタルヘルス 2015年4月3日)
*2 宅配+高齢者の「ご用聞き」 佐川とローソンが開始 (日本経済新聞 2015年6月24日)