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2018年03月08日

介護の現場でいよいよ「共生型サービス」が開始に!学ぶべき「富山型」とは | 「介護求人ナビ 介護転職お役立ち情報」

年齢や障がいに関係なく“共に生活できる場“とは

特別養護老人ホームや有料老人ホーム、認知症グループホームは、高齢者専用の生活の場です。高齢者以外の人がそこで暮らすことはありません。

介護職としてこうした場で働いていると、高齢者だけが集まって生活していることについて、特に疑問を持つことはないかもしれません。しかし、病気やけがを治すために一定の期間入院する病院と違い、特別養護老人ホームなどの施設は生活の場です。

よく考えてみると、生活の場に一定の条件の人だけが集まって暮らすというのは、少し不自然だとは思いませんか? 本来、人が生活する地域社会には、いろいろな人たちが暮らしているのですから。

今、「共生」という言葉がよく聞かれます。
介護が必要な高齢者も、障がいを持つ人も、子どもも大人も学生も働いている人も、誰もが互いに尊重し合い、多様なあり方を認め合って共に生きることを指しています。
学生と高齢者が共に暮らすケースが増えていることなどが、2018年2月に新聞で紹介されていました(*)。

2018年度の介護保険法改正では、高齢者と障がいを持つ大人や子どもが共に利用できる「共生型サービス」も制度化されます。
いろいろな人たちが共に過ごす。共に暮らす。そんな試みが少しずつ拡がろうとしています。

さまざまな事情を持つ人たち、異世代の人たちが共に暮らすことで、互いにメリットが感じられる場合もあります。
記事では、共に暮らす高齢者から戦時中の体験を聞いた学生が、大学教授からは絶対に聞けない貴重な話だと語っています。一方で、高齢者の方は、ひとり暮らしの寂しさや不安が軽減されたメリットを語ります。


「共生型」の先がけである「富山型デイサービス」

障がいを持つ大人や子ども、認知症のある人などが一緒に過ごす「共生型サービス」の例としては、富山県の「富山型デイサービス」がよく知られています。
小規模で家庭的な雰囲気の中、対象者を限定せずに地域にいるさまざまな人の居場所としてサービスを提供しています。

富山型デイサービスを導入しているある施設の利用案内には、「利用できる制度」として次のように書かれています。

・通所介護(介護保険)
・生活介護、自立訓練(自立支援法)
・児童発達支援、放課後等デイサービス(児童福祉法)
・日中一時支援
・在宅障がい者(児)デイケア
・乳幼児・学童など、制度にあてはまらない利用希望者は、1日2,500円、半日1,500円で利用可

つまり、いくつかの制度のサービスを利用できるけれど、制度に該当しない人も利用できますよ、ということです。
実際、このデイサービスでは、かつて、末期ガンの女性が利用を希望し、最後の日々を暮らしたこともありました。


「共生型サービス」なら、誰もが役割を持てる

さまざまな人たちが集うこの富山型デイサービスでは、障がいを持つ人が胃ろうをしながら布団で寝ているそばを、自閉症を持つ子どもが走り回っていたりもします。もしかしたら、子どもに踏まれてしまうことがあるかもしれません。

それでも、リスクを説明し、納得した上で、本人が子どもたちと同じ空間で過ごすことを望めば、それを止めることはしません。
本人が望む過ごし方を実現するのが、このデイサービスの支援スタイルだからです。

障がいを持つ子どもが学校帰りにやって来ると、精神障がいのある人が膝に抱えて、おやつを食べさせてあげたりします。四肢マヒのある車いすの男性の口から、よだれが落ちそうになったら、認知症のある高齢者がタオルで拭ってあげることもあります。
ほうきを持って掃除をしている利用者もいれば、訪れた客にお茶を出している利用者もいます。
このデイサービスでは、それぞれが当たり前のように、自分ができることをしながら過ごしているのです。

この富山型デイサービスの管理者は、さまざまな人がごちゃ混ぜに過ごす場の意味を、このように語っています。

「認知症を持つ人だけ、障がいを持つ人だけをそれぞれ集めて暮らしていたら、一方的にお世話をしてもらう存在になり、役割が固定してしまいます。でも、いろんな人がいたら、互いに苦手なことを補い合って過ごすことができます。そんなふうに、自分にできる役割を担える場で過ごす方が幸せだと思いませんか」

「尊厳を大切にするケア」ということがよく言われます。それを考えていくと、いろいろな人が暮らす地域と同じように、役割を固定しない共生型の空間に行き着くのかもしれません。

「共生型サービス」は、障がいを持つ人が高齢化したとき、利用先を高齢者介護の事業所に変えなくてはならないデメリットが指摘され、今回、導入されることになりました。
サービス提供が始まっても、すぐに高齢者と障がいを持つ人への介護の境目がなくなるわけではないかもしれません。それでも、時代の流れは、さまざまな人が共に暮らせる「共生」に向かっています。
変わっていく時代に受け身になりすぎず、それぞれの職場で変化に対応するための準備に取り組みたいものです。

<文:宮下公美子 (社会福祉士・臨床心理士・介護福祉ライター)>

*学生と高齢者 一つ屋根の下に 家族でなくても同居、支え合い NPOや行政がつなぐ(日本経済新聞 2018年2月9日)

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